備忘録としての生活記録

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アリス幻想綺譚2019 アリスとファンタジーの普遍的概念:~2019/02/27

 アリス幻想綺譚2019 アリスとファンタジーの普遍的概念:Bunkamura Gallery

に行って参りました。

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 「アリス自身の持つ永遠の少女性(「アリス」と言う名称から想像・連想し得る観念的なアイコン)と同時に、少女とファンタジーから成り立つ普遍的な共有概念も視野に入れた世界観をテーマに、30余名の作家それぞれが独自の解釈・技法により表現した作品を展開」(下記本展ホームページより引用)したというこの展示は、現代アーティストならではの自由な発想と、退廃観のようなもので満ちており、大変面白い展示でした。

 参加アーティストは、

【平面】味戸ケイコ、東逸子、イヂチアキコ、小川香織金子國義、北見隆、黒木こずゑ、寒河江智果、新宅和音、高田美苗、たま、友沢ミミヨトレヴァー・ブラウン、中村キク、七菜乃、西塚em、丹羽起史、長谷川友美、深瀬優子、森ヒロコ、山本タカト
【立体】清水真理、垂狐、高齊りゅう、衣、陽月、ホシノリコ、三浦悦子、村上仁美、森馨吉田良、Chong Yang-Hee、Kim Yoon-Ok、Sera、Shin Jung-Mi、 Sooya、 Ji Hye-Jung

(下記本展ホームページより引用、敬称略)

です。

 ギャラリーであるため入場料も無く、広すぎず、Bunkamuraの正面入り口からも近く、気軽に訪れることができる展示でした。実際に、若い来訪者も多く見受けられました。

 「アリス」というテーマ故か、参加しているのは多様な作家さん方である筈なのにも関わらず、少女、毒、不気味、生命、崇高、可愛らしさ、悲しさ、儚さ……といったような空気が共通して全体的に漂っており、不思議なまとまりのある展示でした。

 どの作家さんの作品も大変素晴らしい上に筆者好みだったのですが、筆者の力不足で全員の作品の感想を述べることができないので、特に印象深かった作品について少し触れたいと思います。また、以下の感想は、素人である筆者の個人的なものなので、紹介する作品だけでなく、全ての作品を会場で御覧いただくことをお勧め致します。

 作家様のお名前の後ろには、基本的にTwitterのアカウントを記させていただいております。展覧会は撮影禁止でしたが、ご自身の作品をTwitter上で紹介されている作家さんも多いので、是非ご参考くださいませ。

 

森馨さん(@kaoru_mori)『制服アリス』

 制服を着たアリスの球体関節人形です。本展にはいくつかの球体関節人形が展示されていたのですが、森馨さんの『制服アリス』は、その中でも一際印象に残る作品でした。他の作品の西洋的なお顔に対し、森馨さんのお人形は少し東洋的で、お顔の作りや佇まいはとても美しいのですが、消え入るようなか細さや虚ろな「無」の気配を放っているような気がして、それがとても素敵だと感じました。森さんのTwitterやブログで他の作品も拝見しましたが、その雰囲気はどの作品からも共通して感じられるように思います。

 

友沢ミミヨさん(@mimiyooo)『アリス?』

 友沢ミミヨさんの作品は、中野ブロードウェイのお店「タコシェ」さんの看板等で存じ上げていたのですが、今回の展示の中で一際異彩を放っていました。サブカル界の大御所のような方で、作品から漂うオーラはやはり格別だった気がします。毒があるのに、本展で一番可愛らしいアリスでした。友沢ミミヨさんにはこたおさん(@KKKOTAO1)というお嬢様がいらっしゃり、やはり芸術の道を進んでいる現役芸大生で、しかも元アイドルという経歴の持ち主。お二人は「とろろ園」というユニットを組まれ、3/9からBillikenGalleryで親子展を開催するとのことです。

 

トレヴァー・ブラウンさん(@_babyart)(作品タイトルを忘れてしまいました……)

 筆者はサブカル・アングラが好きではあるのですが、直接的な気持ち悪さのある表現はあまり得意ではありません。本展におけるトレヴァー・ブラウンさんの作品は、そのような要素も多々含まれており、筆者の苦手なモチーフも使用されているのですが、全体的な柔らかい水色と桃色の色味が、その気持ち悪さを和らげ、良い意味で刺激の弱く、「少女」味の強い作品になっていました。大きな作品なので、近くで一つ一つのモチーフを鑑賞したくなりますが、一歩離れて作品の全体を眺めると、髑髏のモチーフが浮き上がってくるのも面白かったです。

 

中村キクさん(@kiku_na)『月夜』

 この作品は、何よりも全体の色味が上品!細かいタッチの多い作品ですが、一つ一つのモチーフが主張することがなく均一で、それ故に見ていて穏やかになる作品でした。作品の大きさとその繊細さが、我々を作品世界にすっと引き込むのですが、中村キクさんの作品にはそれによる疲労感を一切感じさせず、寧ろ落ち着いた気持ちにさせてくれます。

 

黒木こずゑさん(@mitsuami_chan)

 黒木こずゑさんの作品は、どれもお洒落で、御伽噺そのもののような世界観の作品でした。凝った額も、その童話性を強めており、小さい作品ではありますが、たっぷりの物語を含んでいるような印象を受けました。骨董品の山の中から見つけた古い絵本をそっと捲ったような作品達です。

 

深瀬優子さん(@fukaseyuko)

 勿論本展のどの作品も素晴らしく優劣をつけるなんてもっての外ではありますが、深瀬優子さんの画風は、筆者にとって最も好みのものでした。絵のタッチに癖が無く、画面全体もあっさりとした構成なのですが、人物の表情とデザインがとても可愛いらしいのです。深瀬優子さんの描く人物は、先述した森馨さんとも似たような空虚感を放っています。絵自体は可愛らしいモチーフで溢れていて、登場する人物等の生き物からも木のおもちゃような親しみが感じられるのですが、そこに内包された「無」がどことないもの悲しさを感じさせます。

 

東逸子さん(こちらも作品タイトルを忘れてしまいました……)

 幻想的で、美しい絵でした。非常に小さい作品なのですが、額を含めた一つの作品として仕上がっており、絵だけでなく、その額の造形もどこか宇宙的で繊細で美しいものでした。しきりとガラスの間にあり、すこし見にくいかもしれませんが、是非じっくり味わっていただきたいと思います。

 

丹羽起史さん(Twitterのアカウントは無さそうですが、FaceBookはされているそうです)

 本展で、最も不気味な作品達であったような気がします。女の子の絵や、部分部分は可愛らしいのですが、絵のそこかしこに不気味な「顔」が潜んでおり、それらの「顔」が作品の後味として残るのです。

 

 ◍清水真理さん(@shimizumari)『Alice in  merry-go-round』

 こちらもお人形の作品なのですが、お人形の美しさは勿論のこと、アリスのスカートの中のメリーゴーラウンドという構図があまりにも可愛すぎてとても印象的でした。メリーゴーラウンドの乗り物も、幻想的な生き物がモチーフとなっており、筆者は特に人魚に魅力を感じました。人形の完璧な美しさに対し、メリーゴーラウンドに人の手の気配が感じられるのも、作品にある種の幼さのようなものを漂わせ、童話性や夢幻性を強めていたように思います。

 

三浦悦子さん(@miura_etsuko)『エマ、ウッズのアリス』

 箱の中にアリスや食器、鳥籠等の様々なモチーフが収まっている、不思議で少し不気味な作品です。一つ一つのモチーフは乙女チックで可愛らしいのですが、アリスの過度に傾いた頭や、独立している手等がどことない違和感を与えます。アリスの釣り目も印象的です。

 

chong yang - heeさん (instagram:chongyanghee)

 こちらも人形作家さんです。人形の肌を、まるでキャンパスにように見立て緑や黄色を用いて彩色しているのにとても惹かれました。筆者には、その多彩さが、寧ろ退廃的な印象を与えている気がしました。肌に雑居する色味が、無機質な建物を覆う雑草を思わせ、我々に廃墟を連想させるのかもしれません。

 

村上仁美さん(@Hiiceramica)『Wanderland in Alice』

 村上仁美さんの、アリスのスカートと足によるカップアンドソーサーの作品も可愛らしいのですが、筆者は村上さんの陶器作品『Wanderland in Alice』を見た時、物凄い衝撃を受けました。本展示で、筆者が最も好きな作品です。そしておそらく、最もグロテスクで、最も醜い作品です。「アリスの中の不思議の国」、というタイトルの通り、「不思議の国」が、アリスの裂けた薄暗い腹部から覗いています。アリスは金色の乳頭を露わにした裸体を大きく仰け反らせ、体中に汗のような白い半濁の玉をびっしりと浮かべ、開いた口から「不思議の国」を吐き出しています。決して現実にはあり得ないその姿が、筆者にはとても人間らしく感じられました。

 

垂狐さん『鏡湖』(@suico_v)さAlice』

 無表情に立つ裸体のアリスのお人形なのですが、その白い肌には、青い血管がうっすらと透けており、四肢の先まで走っています。「人形」としての存在を一糸まとわず主張しているのにも関わらず、血管から放たれる生生しさが人形に温度を与えているように感じられました。

 

吉田良さん(instagram:doll_space_pygmalion)

 本展示で、最も躍動感と生命を感じたお人形達でした。人形作品は、本来「置かれる」という展示が主だと思うのですが、吉田良さんのお人形は、絵画の一部のように展示されており、「動き」――靡く髪や服――を与えられています。絵画のように展示されてはいますが、やはり人形は立体であり、その差異が人形に妙な現実味を与え、まるで作品の匂いまで漂っているかのような感覚を放ちます。

 

 色々な作家様の作品を観られる展示は、新たな発見も多く、とても楽しかったです。会場には物販スペースもあり、各作家様のお手製のグッズやポストカードや、関連書籍を購入することもでき、こちらも是非ゆっくり御覧いただきたいと思います。

 筆者がもたついていたせいで、本日が会期の終了ですが、お時間のある方は是非!

 

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――2019/02/27

 

 

「アリス幻想綺譚2019 アリスとファンタジーの普遍的概念」
 場所:Bunkamura Gallery
 会期:2018/02/15(金)~2019/02/27(水) ※休館日はホームページ等をご確認ください。

 

 

「アリス幻想綺譚2019 アリスとファンタジーの普遍的概念」

https://www.bunkamura.co.jp/gallery/exhibition/190215alice.html

https://www.bunkamura.co.jp/gallery/

https://www.bunkamura.co.jp/index.html

(※Bunkamura様のホームページ上にリンクに関する記載が無く、また問い合わせフォームも見つけられなかったため、無断で、上から、展示「アリス幻想綺譚2019 アリスとファンタジーの普遍的概念」、Bunkamura Gallery様、Bunkamura様のページへのリンクを添付させていただきました。不都合のある場合は直ちに削除致しますのでご連絡くださいませ。)