備忘録としての生活記録

知識は無いけれど芸術が好きなコミュ障インキャ芋ブスヲタクの戯言

天文学と印刷:印刷博物館:~2019/01/20

 天文学と印刷:印刷博物館

に行って参りました。

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 「さまざまな活動や知識を参照するために、できるだけ具体的に資料を」見て欲しいという願いの元に開催された本展は、その言葉の通り、丁寧で詳細な解説が多く、展示に対する満足度は勿論、学びとしての満足度も一入でした。

 また、本展の趣旨は「ルネッサンス」という時代の「人間知性の謳歌」を支えた「天文学」と「印刷技術」の「出会い」を紐解くことだと言います。正直、寡聞な筆者は、実際に展示を見るまでは、この試みについて、少々のこじつけ感を否めませんでした。しかし、博物館を出た後にはそんなことは全く思うことなく、本展はその趣旨を見事に達成していたと思います。

 これから「天文学と印刷」展を見に行かれる方々に伝えたいことが二つあります。

 一つは生命思想としての天文学という観点です。本展に関し、事前に入手できる情報から推測すると、非常に科学的な展覧会であるようにも思われます。例えば、近代以前、人々には惑星と臓器は関係しているという人体観や、宇宙の調和という観念がありました。天文学が、そういった、現代の我々からすると神秘的に思われる世界を含有していることを意識すると、本展をより深く楽しめるだろうと思います。

 二つ目は、時間に余裕を持って訪れてほしい、ということです。「天文学と印刷」展それ自体も、時間をかけてゆっくりと見るべき展示なのですが、それを挟むプロローグや総合展示も、大変興味深いものが多く、是非急がずに見ていただきたいと思います。5時間は優にいられるのではないでしょうか……。

 

プロローグ

 さて、少々前置きが長くなってしまいましたが、全体を通した具体的な感想を述べていきたいと思います。

 まず、凸版印刷株式会社が設立した印刷博物館は、ビルの中にあり、少々近付きにくいような印象がありますが、正面入り口を見つければ問題ありません。あれ、住所は合っているはずなのに何か違う気がする……と感じたら、ビルの周りをぐるっと周ってみると良いと思います。

 「天文学と印刷」展に入る前には、「プロローグ」と称された、印刷の歴史を簡単におさらいできる展示室が一室設けられています。紀元前の壁画から戦前の広告、現代のディスクに至るまで幅広く印刷文化に関わる展示を見ることが出来ます。また、ミニチュアでの再現や、井戸を覗くことで鑑賞できる映像作品など、プロローグから非常に凝った展示が成されています。特にこの井戸は、どことなく幻想的な雰囲気を漂わせるアニメーションや、懐古の情を抱かせる音楽がとても印象的でした。さらに、プロローグの最後には、凸版印刷が開発した絵画鑑賞システム『ViewPaintフェルメール≪牛乳を注ぐ女≫』を見ることが出来ます。

bijutsutecho.com

 

天文学と印刷」展

 プロローグの後には、いよいよ「天文学と印刷」本展です。

 展示室は、「天文学と印刷」の世界観を十分に表している素晴らしい空間でした!各々の章の始めに下がっているのれんのような布には、各章で特に重要な役割を果たした偉人達の言葉が記されています。また、至る壁にも幻想的で天文学的な模様が!資料保存の為か薄暗く肌寒い部屋で見るそれらの装飾は、鑑賞者を一つの宇宙空間へ誘ってくれます。展示の様子については、Twitter印刷博物館公式アカウント(印刷博物館PrintingMuseum @PrintingMuseumT)様が一部写真を掲載していらっしゃいますので、そちらを参考にしていただければと思います。

twitter.com

 全体的に当然ながら印刷物――書物――の展示が多く、一つ一つの資料がこじんまりとしていて、解説も多く、一見飽きてしまいやすく思われますが、多様な展示方法が鑑賞者に飽きを与えません。例えば、ケースの中に鏡が仕込まれており多角的に資料を見られるような展示や、手袋を装着することで実際に本の頁を捲ることができるような展示、天文学的な観測が行われた海外の観光地を映像で体験できる展示などがありました。また、古い書物、中世の神秘的な天文学的見解に対する挿絵、植物のようなアルファベットの羅列……オカルティズムが好きな人にとっては、内容云々以前に、そういった風体の資料そのものがとても魅力的に感じるとも思われます。

 本展では、丁寧に構築された世界観の中で、楽しみながら知識を増やすことが出来ました!また、その知識というのも、普段の教育ではなかなか触れることのできないものであり、是非とも沢山の方々に経験していただきたいと思います。知性への刺激を求める方、異空間に浸りたい方、幻想的なイラストを見たい方、そんな様々な方々の欲求を満たせるのは、博物館ならではなのかもしれません。

 

総合展示

 「天文学と印刷」本展を観終わると、5つのブロックによって構成されている総合展示が控えております。こちらは、プロローグ展示をより詳しく掘り下げた、非常に密度の濃い展示です。様々な道具や資料の展示に留まらず、ほぼ全てのブロックで体験をすることが出来、また同じくほぼすべての展示で紹介映像を見ることが出来ます。一つ一つの資料や解説の情報量は膨大ですが、小学生等の子ども達等にも楽しめるような内容でした。

 また、特定の時間で『印刷の家』という無料ワークショップも開かれており、残念ながら筆者は参加することができなかったのですが、その様子を垣間見たところ、スタッフの方が実際に印刷機械を動かしている様子が目に映り、機会があれば是非参加したいと思いました!

図録

 そして、「天文学と印刷」展での目玉の一つは、何と言っても、その印刷技術を駆使した図録です。なんと、こちらの図録ですが、第60回カタログ展にて、文部科学大臣賞と柏木博章を受章したとのこと!お値段税込み3000円でこの美しさなのです!糸綴じでとても見やすく、中身の紙質やデザインにもとてつもない拘りを感じます。

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 図録だけでなく、目録までこんなに素敵なのです。

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 展示だけでなく、グッズにまで拘った世界観の構築は、感動的で涙が出そうです。

 

おまけ

 印刷博物館のグッズは、常置されているものもとても魅力的です。図録以外では、こちらを購入させていただきました。

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 今回の購入は見送りましたが、過去の企画展の図録等も惹かれるものばかりでした!

 

<参考>

天文学と印刷」図録,003頁

 

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ーー2018/11/20

 

天文学と印刷」
 場所:印刷博物館
 会期:2018/10/20(土)~2019/1/20(日) ※休館日はホームページ等をご確認ください。

www.printing-museum.org