2018年の生活記録
追想
ブログを始めたのはつい最近ですが、色々と活動をした2018年を振り返ってみたいと思います。今年は、美術館に留まらず、博物館や映画、舞台等様々な芸術に触れることが出来ました。いつもよりも備忘録としての色が強くなりますが、よろしければお付き合いくださいませ。
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1月
6:映画『皆殺しの天使』
-シアター・イメージフォーラム
8:映画『砂漠のシモン』『アンダルシアの犬』
-シアター・イメージフォーラム
9:映画『ビリディアナ』
-シアター・イメージフォーラム
12:『仕立て屋のサーカス』
-ルミネゼロ
2月
15:ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』
-日生劇場
20:野口英世記念館
3月
30:『「光画」と新興写真』
『鹿島茂コレクション フランス絵本の世界』
4月
28:『ルドンー秘密の花園』
5月
2:鉄道博物館
20:オペラ『フィデリオ』
6月
7:『板橋区立美術館コレクションによる日本のシュルレアリスム展』
-川越市立美術館
16:『無花果の帰り道』
-meee Gallery Tokyo
9月
1:プーシキン美術館
2:トレチャコフ美術館新館
22:ミュージカル『乃木坂46版ミュージカル美少女戦士セーラームーン』
-TBS赤坂ACTシアター
29:代官山フォトフェア
『ビルギット・ユンゲルセン(Birgit Jürgenssen)』
-Fergus McCaffrey TOKYO
10月
4:鉄道博物館
11:『マジック・ランタン』
18:『幻花幻想幻画譚』(横尾忠則)
-ギンザ・グラフィック
『シュルレアリスム』(ウジェーヌ・アジェ)
-Art Gallery M84
『Every Story Tells Picture』(フランク・トランキナ)
-MEGUMI OGITA GALLERY
20:ミュージカル『黄金バット~幻想教師出現~』
ー特設紅テント
28:『ジェフリー・グレーヴス & ロイド・グリーン 展 』
-Monochrome Gallery RAIN
11月
8:『村上友晴展ーひかり、ふり注ぐ』
-https://carameng.hatenadiary.com/entry/2018/11/12/102857
20:『天文学と印刷』
-https://carameng.hatenadiary.com/entry/2018/12/07/160751
22:『マルセル・デュシャンと日本美術』
12月
1:『コウムラシュウ展』
-Monochrome Gallery RAIN
『The work of Makeup artist Mu』
-Gallery RUNAN
9:『薄井憲二バレエ・コレクション特別展 The Essence of Beauty バレエー究極の美を求めて』
-そごう美術館
-https://carameng.hatenadiary.com/entry/2018/12/20/113052
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以上、2018年は、
3作の映画作品、
5作の舞台作品に触れ、
3か所の博物館や記念館を訪れ、
美術館やギャラリーによる19もの展覧会に訪れることが出来ました。
今年は、特に多忙な年であり、時間的余裕や金銭的余裕、心理的余裕のバランスをうまくとれず、行きたかったのに行けなかった展覧会も枚挙に暇がありませんが、こうして振り返ると、非常に充実していたのは確かであったと思います。また、福島県やロシアのモスクワに旅行をし、普段は行くことのできない記念館や美術館に足を運べたことや、愛して止まないマルセル・デュシャンの作品を身近に感じられたこと、お気に入りのギャラリーを見つけられたこと等は、2018年でしかできない経験だったと言えるでしょう。
そして何より、この2018年は、一瞬一瞬の作品との出会いをこうして振り返ることの楽しさを知ることができた年でもあります。書き上げることのできたブログは3つ、それも研究の足りない浅いものですが、作品達に出会って感じた感動をいつでも蘇らせることができるのだ、という妙な安心感があります。そして、そんな筆者にとっての追想の契機が、筆者以外の皆様の感動の契機ともなれば良いと感じています。
目標
さて、折角なので、2019年の、このブログにおける目標を少し。
来年は、2018年よりも更に時間的余裕が無くなってしまうことが予想されます。おそらく、2018年ほど多くの展覧会に訪れることができなくなってしまいますが、その分、一つ一つの作家や作品に対する研究を深めていければと思います。そしていつか、このブログを一つの議論の場とできるぐらいには知識を付けたいです……。
それでは、良いお年を。
薄井憲二バレエ・コレクション特別展 The Essence of Beauty バレエー究極の美を求めてー:そごう美術館:~2018/12/25
薄井憲二バレエ・コレクション特別展 The Essence of Beauty バレエー究極の美を求めてー:そごう美術館
に行って参りました。
筆者は、絵画以上に、バレエに関する知識は皆無で、今回本展に足を運ぼうと思ったのは、たまたま横浜方面に用事があったため、また、ポスターのアンナ・パヴロワの写真とアンティークプリントに惹かれたためです。
こちらはそごう横浜6階にある美術館です。百貨店内の美術館ということで、筆者は精々2時間あれば回れるだろう……と思っていたのですが、全く足りませんでした……。後ろに用事があったため、展覧会後半は大分駆け足になってしまい、少々無念ですが、それでも十分に満足できるものだったのは確かです。
全体としては、百貨店という空間故か、一般的な美術館よりも開けており、また美術館独特の張りつめた静寂も無く、気軽に足を運べる印象でした。実際に親子連れや小学生程の子ども達の姿も多く見受けられました。
解説も大変コンパクトで分かりやすく、頭をフル回転させながら鑑賞する、というよりも、会場を出たらいつの間にか知識が増えていた!というような感想を抱きます。
会場を入るとすぐ、牧阿佐美バレヱ団による『くるみ割り人形』のハイライト映像が見られます。筆者にとっては、授業で見た『春の祭典』の『生贄の踊り』を除けば、これが人生で初めて見たバレエでした。役者が動くたびに煌めく衣装、登場人物たちの人間離れした華麗な動き――人間の理想とする美の全てがそこにある気がして、目を離せなくなってしまいました。会場には、様々な役者さんたちの写真も展示してあるのですが、映像を切り取った作品でさえ、物凄く美しい……。勿論、彼らの顔が端正なこともその一因ですが、表情から爪先まで、神経の通った人形のように理想的な姿なのです。
以下では、特に印象深かった展示を具体的に振り返ってみたいと思います。本展は、「バレエを知る」「バレエを見る」「バレエを踊る」という三部構成になっていますが、このブログでは、平面資料と立体・映像資料との二部に分けて感想を述べていきたいと思います。
平面資料
まずは、ワツラフ・ニジンスキー晩年の写真『最後の跳躍』です。人間離れした跳躍を見せたというニジンスキーは、晩年精神に異常を来たし、踊ることを忘れてしまったそうです。しかし、見舞いに来たセルジュ・リファールが彼の目の前で『薔薇の精』を踊ると、その跳躍シーンで、ニジンスキーが人生で最後の跳躍をみせたといいます。とても胸を打つ話で印象にに残っていたのですが、帰宅後こんな記事を見つけました。(ロシア・ビヨンド様の記事です。引用に関する記述が見当たらなかったため、下記のように引用させていただきますが、問題がある場合は直ちにご連絡いただければ即対応致します。)
もともと一般とは離れた精神を持っていたのであろうニジンスキーが、人間離れした身体技術を持っていたのは大変興味深い事実です。以前モンゴルを旅行した時に、神をその身に降ろしたシャーマンが、自己の身体を傷つけたものの、神が抜けるとその傷は治っていた――という話を聞きました。仮に、ニジンスキーの精神異常が、常にその身に神を宿しているゆえの超精神的なものだった場合、彼自身が「空中で止まるだけ」だと評する身体的行為を難なくこなせたのは、ある意味不思議なことではないのかもしれません。ニジンスキーへの興味が一段と深まります!
その他、印象に残っていたのは、「ルイ14世の『太陽王』の呼称は彼が好演した太陽神バロンによる」という話です。バロンってバリ島の聖獣の?と思いましたが、インターネット上には、ルイ14世の太陽王の起源はギリシア神話の太陽神アポロンだとする話が多く見られます。単純にバロンとアポロンを間違えたのか、それともバロンとアポロンには共通した背景があるのか、はたまたやはりルイ14世が好んだのは聖獣バロンなのか……ぜひ書物で調べたいです。
また、様々なバレリーナ達に関する展示や逸話もとても面白かったです。伝説的なバレリーナであるマリー・タリオーニやファリー・エルスラーの直筆の手紙も展示されていました。それぞれイタリアやオーストリアという国の言語故なのかもしれませんが、字があまりにも繊細で美しく、彼女らの可憐な踊りが想像できるようでした。
一見きらきらしたバレエの裏側を描いた風俗画のアンティークプリントも大変興味深いものでした。例えば、娼館としてのバレエについてです。当時バレエは文化的に退廃していき、紳士達がお気に入りの少女を探す場であると同時に、バレリーナ達が紳士の中からパトロンを見つける場であったそうです。アンティークプリント『オペラ座のネズミ』の、皆同じ顔とポーズをした少女達の絵は、特に印象に残りました。
そして、今回の何よりもの収穫は「バレエ・リュス」です。もともとストラヴィンスキーやダリ、ピカソが関わったバレエ団があることは知っていたのですが、今回の展示で初めてその詳細を知ることができました。さらに、私の好きなジョルジョ・デ・キリコも関わっていたなんて!私は寡聞にして存じ上げませんでしたが、2007年には映画『バレエ・リュス ~踊る歓び、生きる歓び』が上映されていたり、2014年には国立新美術館で「現代の芸術・ファッションの源泉 ピカソ、マティスを魅了した伝説のロシア・バレエ 魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展」が行われていたりしたそうです。
魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展 Ballets Russes: The Art of Costume|企画展|展覧会|国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO
さらに!残念なことに、早歩きでまわってしまった後半に、バレエ・リュスに関わった芸術家たちに関する資料がありました……。これは、もっと自分で本を読んで研究しなさい、というお告げですね、きっと。
その他、随所にバレエの物語のあらすじが書かれているのもとてもよかったと思います。読むのが苦ではない程度にまとめられており、文章も分かりやすく、とても楽しかったです。特に印象的だったのは、ジョルジュ・バルビエの作品がまとめて展示されていた一角です。バルビエの多数の作品が並べられ、その下部分に作品の題材であるバレエのあらすじが一つ一つ展示されており、まるで絵本を読んでいるかのような感覚を覚えました。バルビエの作品もとても香しく、特に『シェエラサード』の官能的な美しさは忘れられません。
(インターネット上で、バルビエの作品を紹介しているブログを見つけました。
ジョルジュ・バルビエ 「ニジンスキー」 George Barbier - NIJINSKY.)
立体・映像資料
本展の目玉の一つでしょう。中盤では、アンナ・パヴロワの実際の演技の白黒映像を見ることが出来ます。様々な作品のダイジェストで、多少の原作の改変はあるそうですが、件の『瀕死の白鳥』も見ることが出来ます。可憐なアンナ・パヴロワの様々な映像の中で、『瀕死の白鳥』の痛々しさが際立っていました。死の間際、白鳥の衣装を求めたという彼女の白鳥は、まるで針の上に立って踊っているかのような危うさがありました。突然ふっと力の抜ける四肢や、どこか上品な痙攣は、ついつい息をするのを忘れて見入ってしまいます。
後半には、『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』等のバレエ作品で実際に使用された衣装の展示が並びます。こちらも、男性の衣装も女性の衣装も、溜息が出るほど美しい。裾の長い衣装や、ビロードのような重々しい見た目の衣装もあり、実際にそれを着て役者が妖精のように踊っていたことなど想像もつかないほど豪奢で煌びやかです。勿論衣装に手を触れることはできないのですが、ショーケースや立ち入りを禁ずるテープがあるわけではなく、非常に近しい距離感で展示を鑑賞することができます。
最後に紹介したいのは、エリアナ・パヴロワの、第二次世界大戦中の戦地慰問に関する手資料の展示です。エリアナ・パヴロワはアンナと同じパヴロワ性ですが、軽く調べましたが、彼女らに血のつながりは無さそうです……。本で調べる時間が無かったので、断言することができません……。もしも詳しいことをご存知の方がいらっしゃいましたら、是非詳しく教えていただきたいです。閑話休題。展覧会では、祖国ロシアの革命を逃れて来日し、日本に帰化したエリアナ・パヴロワに関する資料が多数展示されています。戦争当時の空気をそのまま纏ったような腕章や、慰問公演を見た兵士からの手紙等、見ごたえのある資料が多数でした。また、アンナが、自らの日本の帰化について、「私は日本を愛しているけれど祖国を捨てたわけではない」といったような内容のことを語っており、その両極端で過激にならない、優しく大らかな態度は、是非見習いたいと感じました。
総じて、時間の都合で全ての資料を鑑賞することはできませんでしたが、バレエという筆者にとっては初めての展示であったにも関わらず、非常にためになる展示でした。今回の展示で、改めて色々と調べてみたいことが増えたことに加え、絵画以外の広い視野で「芸術」を見ることができたのも大きな収穫であると思います。
<その他参考>
◍公益社団法人日本バレエ教会、バレエ小辞典
http://www.j-b-a.or.jp/o/contentsu.html
◍そごう横浜、薄井憲二バレエ・コレクション特別展 The Essence of Beauty バレエー究極の美を求めてー展専用ページ
(問い合わせたところリンクの掲載の許可が下りませんでしたので、興味のある方はご自身での検索をお願い致します。)
『備忘録としての生活記録』著作権について - 備忘録としての生活記録
ーー2018/12/9
「薄井憲二バレエ・コレクション特別展 The Essence of Beauty バレエー究極の美を求めてー」
場所:そごう美術館
会期:2018/11/23(金)~2018/12/25(火)、会期中無休 ※詳細はホームページ等をご確認ください。
天文学と印刷:印刷博物館:~2019/01/20
天文学と印刷:印刷博物館
に行って参りました。
「さまざまな活動や知識を参照するために、できるだけ具体的に資料を」見て欲しいという願いの元に開催された本展は、その言葉の通り、丁寧で詳細な解説が多く、展示に対する満足度は勿論、学びとしての満足度も一入でした。
また、本展の趣旨は「ルネッサンス」という時代の「人間知性の謳歌」を支えた「天文学」と「印刷技術」の「出会い」を紐解くことだと言います。正直、寡聞な筆者は、実際に展示を見るまでは、この試みについて、少々のこじつけ感を否めませんでした。しかし、博物館を出た後にはそんなことは全く思うことなく、本展はその趣旨を見事に達成していたと思います。
これから「天文学と印刷」展を見に行かれる方々に伝えたいことが二つあります。
一つは生命思想としての天文学という観点です。本展に関し、事前に入手できる情報から推測すると、非常に科学的な展覧会であるようにも思われます。例えば、近代以前、人々には惑星と臓器は関係しているという人体観や、宇宙の調和という観念がありました。天文学が、そういった、現代の我々からすると神秘的に思われる世界を含有していることを意識すると、本展をより深く楽しめるだろうと思います。
二つ目は、時間に余裕を持って訪れてほしい、ということです。「天文学と印刷」展それ自体も、時間をかけてゆっくりと見るべき展示なのですが、それを挟むプロローグや総合展示も、大変興味深いものが多く、是非急がずに見ていただきたいと思います。5時間は優にいられるのではないでしょうか……。
プロローグ
さて、少々前置きが長くなってしまいましたが、全体を通した具体的な感想を述べていきたいと思います。
まず、凸版印刷株式会社が設立した印刷博物館は、ビルの中にあり、少々近付きにくいような印象がありますが、正面入り口を見つければ問題ありません。あれ、住所は合っているはずなのに何か違う気がする……と感じたら、ビルの周りをぐるっと周ってみると良いと思います。
「天文学と印刷」展に入る前には、「プロローグ」と称された、印刷の歴史を簡単におさらいできる展示室が一室設けられています。紀元前の壁画から戦前の広告、現代のディスクに至るまで幅広く印刷文化に関わる展示を見ることが出来ます。また、ミニチュアでの再現や、井戸を覗くことで鑑賞できる映像作品など、プロローグから非常に凝った展示が成されています。特にこの井戸は、どことなく幻想的な雰囲気を漂わせるアニメーションや、懐古の情を抱かせる音楽がとても印象的でした。さらに、プロローグの最後には、凸版印刷が開発した絵画鑑賞システム『ViewPaintフェルメール≪牛乳を注ぐ女≫』を見ることが出来ます。
「天文学と印刷」展
プロローグの後には、いよいよ「天文学と印刷」本展です。
展示室は、「天文学と印刷」の世界観を十分に表している素晴らしい空間でした!各々の章の始めに下がっているのれんのような布には、各章で特に重要な役割を果たした偉人達の言葉が記されています。また、至る壁にも幻想的で天文学的な模様が!資料保存の為か薄暗く肌寒い部屋で見るそれらの装飾は、鑑賞者を一つの宇宙空間へ誘ってくれます。展示の様子については、Twitterの印刷博物館公式アカウント(印刷博物館PrintingMuseum @PrintingMuseumT)様が一部写真を掲載していらっしゃいますので、そちらを参考にしていただければと思います。
全体的に当然ながら印刷物――書物――の展示が多く、一つ一つの資料がこじんまりとしていて、解説も多く、一見飽きてしまいやすく思われますが、多様な展示方法が鑑賞者に飽きを与えません。例えば、ケースの中に鏡が仕込まれており多角的に資料を見られるような展示や、手袋を装着することで実際に本の頁を捲ることができるような展示、天文学的な観測が行われた海外の観光地を映像で体験できる展示などがありました。また、古い書物、中世の神秘的な天文学的見解に対する挿絵、植物のようなアルファベットの羅列……オカルティズムが好きな人にとっては、内容云々以前に、そういった風体の資料そのものがとても魅力的に感じるとも思われます。
本展では、丁寧に構築された世界観の中で、楽しみながら知識を増やすことが出来ました!また、その知識というのも、普段の教育ではなかなか触れることのできないものであり、是非とも沢山の方々に経験していただきたいと思います。知性への刺激を求める方、異空間に浸りたい方、幻想的なイラストを見たい方、そんな様々な方々の欲求を満たせるのは、博物館ならではなのかもしれません。
総合展示
「天文学と印刷」本展を観終わると、5つのブロックによって構成されている総合展示が控えております。こちらは、プロローグ展示をより詳しく掘り下げた、非常に密度の濃い展示です。様々な道具や資料の展示に留まらず、ほぼ全てのブロックで体験をすることが出来、また同じくほぼすべての展示で紹介映像を見ることが出来ます。一つ一つの資料や解説の情報量は膨大ですが、小学生等の子ども達等にも楽しめるような内容でした。
また、特定の時間で『印刷の家』という無料ワークショップも開かれており、残念ながら筆者は参加することができなかったのですが、その様子を垣間見たところ、スタッフの方が実際に印刷機械を動かしている様子が目に映り、機会があれば是非参加したいと思いました!
図録
そして、「天文学と印刷」展での目玉の一つは、何と言っても、その印刷技術を駆使した図録です。なんと、こちらの図録ですが、第60回カタログ展にて、文部科学大臣賞と柏木博章を受章したとのこと!お値段税込み3000円でこの美しさなのです!糸綴じでとても見やすく、中身の紙質やデザインにもとてつもない拘りを感じます。
図録だけでなく、目録までこんなに素敵なのです。
展示だけでなく、グッズにまで拘った世界観の構築は、感動的で涙が出そうです。
おまけ
印刷博物館のグッズは、常置されているものもとても魅力的です。図録以外では、こちらを購入させていただきました。
今回の購入は見送りましたが、過去の企画展の図録等も惹かれるものばかりでした!
<参考>
「天文学と印刷」図録,003頁
『備忘録としての生活記録』著作権について - 備忘録としての生活記録
ーー2018/11/20
「天文学と印刷」
場所:印刷博物館
会期:2018/10/20(土)~2019/1/20(日) ※休館日はホームページ等をご確認ください。
村上友晴展ーひかり、ふり注ぐ:目黒区美術館:~2018/12/06
村上友晴展~ひかり、ふり注ぐ:目黒区美術館
に行って参りました。
村上友晴氏の作品は、キャンバスや画用紙に油絵具をペインティングナイフで乗せていくものや、画用紙の表面をニードルで削ったものなどが特徴的です。
……といっても専門的な知識が無いので、どの作品がどのタイプか曖昧なのですが……。
村上氏は、墨の表現に興味を持ち、大学時代は日本画科で学んだとのことですが、墨へ惹かれたその嗜好故なのか、その経歴故なのか、全体的に日本的なもの悲しさを感じる作品が多かった印象です。
彼の、絵具をペインティングナイフで削る、という作風は、とても抽象的で感情的であるようにも思われますが、その実は、それだけではなく非常に論理的で計算的な面も内包していました。『無題』と称された、黒の油絵具をペインティングナイフで乗せた複数の作品がありますが、これらは一見皆同じような作品に見えるものの、一つ一つの絵具の粗さが異なっており、その粗さによって鑑賞者に与える印象も異なります。粗いものは、どこか暴力的で、こちらが飲み込まれてしまうような恐怖感を抱かせます。粗さが取れれば取れるほど、暴力性がどこか悲痛な叫びになり、叫びが悲しさになり、……と、一層静謐さを増していくような気がしました。また、このタイプの作品は影がぼこぼこしているのが面白いです。また、画用紙が土台の作品は、正面から見る凹凸感と横から見る薄さのギャップが面白い!
画用紙を削っていくタイプの作品は、息を潜めて鑑賞しないと崩れてしまいそうな繊細さでした。しかし、『マリア礼拝堂』が、寧ろ穏やかで大らかな印象を与えていたことは不思議です。これらの作品は額に入っているものが多いのですが、その表面の硝子に映った自分の顔と作品が溶け合って、いつのまにか意識が自己の内面に向かっていくのがとても興味深く感じました。紙による作品は、紙の辺が繊維を残すようにカットされており、そちらも作品の繊細なイメージを助長していました。
では、特に印象深かった作品を具体的に挙げていきたいと思います。
一階のエントランスホールには、本展最大サイズの作品『無題』が飾られています。こちらは、一歩引いて全体像を眺めると、中心に大きな花が咲いているように見える不思議な作品でした。非常に力強く、明るく前向きな印象を抱かせてくれました。
『十字架の道』や『イコン』等の作品が飾られている間は、コンクリートがむき出しの部屋で、それが村上氏の作品とこの上なくマッチした空間を作り上げていて、何と素晴らしいこと!先日ロシアを旅行し沢山のイ͡コスタスを見てきた筆者には、その時の教会の様子と目の前に広がる空間がリンクし、作品達がキリストや聖人達に見え、神聖な教会の中にいるように思われました。
そして、筆者が一番気に入ったのは、黒の油絵具をペインティングナイフで乗せたところに、小さな赤い斑点を落としてある作品でした。その赤い斑点は、近くで目を凝らさなければ判別できないほど小さく散らばっています。近くで見るとそこに生々しく悲痛な叫びがあるように思うのですが、作品を遠目でみると、ヴェールを纏った様に生々しさが身を潜め、その斑点達が非現実的な黒い霧の中で群れを成してぼんやりと浮かんでいるように見えるのです。
おまけ
基本的に、展覧会で気に入った作品に出会うと必ずと言って良いほど図録を購入する筆者ですが、今回は村上友晴氏の作品の生の質感が忘れられず、どうしても購入することが出来ませんでした。
その代わり、とっても可愛いGeorge Nelsonのポストカードを衝動買いしてしまいました!
『備忘録としての生活記録』著作権について - 備忘録としての生活記録
ーー2018/11/08
「村上友晴展-ひかり、ふり注ぐ」
場所:目黒区美術館
会期:2018/10/03(土)~2018/12/6(木)
『備忘録としての生活記録』著作権について
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